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141-巻頭言「新しい時代・新しい関係」

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巻頭言

新しい時代・新しい関係

来るのか日本と島嶼諸国との新時代


 なにか大きな変化が起こりそうな気がする。年明けとともに、そんな雰囲気がこのところの日本とその周辺に漂っているからだ。
 3年ぶりの自民党政権、しかも安倍首相の再登場に連動して円安、株高が進み、デフレ経済脱却への期待が高まってきた。その一方で、尖閣諸島や北方四島の領土問題、さらには北朝鮮の核実験強行に至るまで、日本を取り巻く東アジア情勢は、にわかに緊迫度を高めている。こうなれば低迷し続ける経済も、7月の参議院選挙を控えた国内政治も、そして新しい政権下での外交も、変わらざるを得ないのではないか。安倍内閣の70%を超える高支持率に、そうした国民の思いが込められている。
 しかし、その変化は、必ずしも好転だけとは限らない。緊迫した情勢や閉塞的状況からの脱出行為に失敗すれば、今よりもかえって悪い結果に陥る可能性だってある。そうならないために政官一体の奮闘を望むところだが、その文脈でひとたび太平洋外交へと目を向ければ、ここにもやはり変わること、変えなければならないことが目白押しなのである。
 その一つは、この1月にサモアのアピアに日本大使館が開設されたことだろう。駐ニュージーランド大使の兼轄大使館だが、アピアには臨時代理大使が常駐するので、実質的には通常の大使館業務と同様となる。これでひとまず、サモア側の不満が解消されたはずだ。というのも、東京に大使を送っているサモアに先駆けて、日本は隣国トンガに大使館を開設したのだが、これが「サモア軽視」と受け取られていたからである。そのトンガも、昨年12月に駐日大使を派遣し、3月には正式に大使館をオープンさせる。これを切っ掛けに、国王の年内訪日の検討が始まったとも聞いた。一昨年に外交関係を樹立したクック諸島を含めて、これらが実現すれば、このところ中国との関係を日に日に強めているポリネシアの国々をググッと日本に引き戻すこともできる。日本の積極的なアプローチは、彼らにとっても望むところ。関係強化に努めるのに、今年は絶好機だと言っていい。
 秋には、第7回太平洋・島サミットに向けた中間閣僚級会合が東京で予定されている。順番ではマーシャル諸島が共同議長国になるが、この国にもサモアが抱いたのと類似の不満がある。ミクロネシア3国のうち、ミクロネシア連邦とパラオには常駐大使を置く日本大使館があるのに、マーシャルは駐ミクロネシア大使の兼轄国になっているからだ。ここにも臨時代理大使が常駐する実館があって実質的な違いが大きいとは思えないが、それでもほぼ同様の歴史過程を経て独立した他の2国との間に差があることが、誇り高きマーシャル人のプライドを傷つけるのだろう。
 とはいえ、本件は政策的というより国内の財政事情が理由だから、それを丁寧に説明するしかない。その上で、中間閣僚会合を共に仕切るパートナーとしての緊密関係を構築することが大事になる。というのも、次回の島サミットで打ち出すべくテーマの方向性を議論する際に、日本の考えをマーシャルに十二分に理解してもらう必要があるからだ。
 前回の島サミットは、中国の進出によって変動する太平洋事情や東日本大震災の直後という情勢が、日本側のある種緊張を高め、これが求心力として働いた。だが、これを次に繋げるには、これまでの惰性だけではだめだ。このままでは、日本による島嶼国への援助分配会議になりかねないし、それさえもかつてのように援助額で米国や中国と張り合えなくなっているのだから。
 日本の求心力の弱体化を防ぎ、島サミットのさらなる発展を目指すには、豪州とも米国とも異なる日本独自の太平洋地域ビジョンを打ち出すこと。その上で、例えば常設事務局を作るとか、地域共同体組織に発展させるとか、目指すべき将来的ゴールを明示し、島嶼国を巻き込んだ実質的な議論ができる場を作り出すことだろう。これなくば、島サミットの意義は回を重ねるごとに薄れ、島嶼国はやがて参加の意欲を失うことになるかもしれない。
 だがその前に、どうしても片づけておかねばならないのが、フィジー問題だ。日本は、第5回、6回の島サミットにフィジーの首相を招待しなかった。軍事クーデタで成立した政権であり、PIF資格が停止状態にあったからだ。しかし今年は、そのフィジーのバイニマラマ首相が来日を検討していると聞く。ならばその機会に、これまで滞っていた日本・フィジー関係を一気に好転させて、フィジーの地域国際社会への復帰を後押しすればいい。排除の論理ではなく、こうしたリーダーシップの発揮こそ、豪州でも米国でもなく、日本が太平洋地域で果たすべき役割なのだから。
 さらに、パプアニューギニアのオニール首相、11月には日本とミクロネシア連邦の外交関係樹立25周年に向けてモリ大統領の来日も決まっている。次々に訪日予定のある島嶼国首脳を迎える今年は、新しい時代の対島嶼国関係を作り出す絶好の機会なのである。(小林 泉)

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