一般社団法人太平洋協会のウェブサイトです

135-巻頭言「それぞれの在京大使館と大使」

  • HOME »
  • 135-巻頭言「それぞれの在京大使館と大使」

巻頭言

「それぞれの在京大使館と大使」

小 林 泉(こばやし いずみ)


samoa 1 samoa 2

 1月下旬、在京サモア独立国大使館のオープニング・レセプションが、入船町の大使館のあるビル(政光ビル) で行われた。当日は、ソファラ・アベアウ建設・運輸大臣ら8人からなる訪日使節団が加わり、百数十名の日本人関係者へのお披露目となった。
 キリフォティ・エテウアティ大使は昨年5月に来日して以来、大使としての外交活動を始めていたが、披露が年明けまで遅れたのは、大使館の場所探しやその後の内装整備等、さらには現地スタッフの調達などに手間取ったからだ。一般のオフィスビル3階の全フロアー60坪ほどが大使館のすべてだが、実館を新規に開設するのはいろいろと手間がかかる。それでも今回は、古くからサモアとの関係が深いパシフィックインターナショナル社(大石敏雄社長)の全面協力を受けて、効率よく開館にまでこぎ着けられた。これで島嶼諸国からは、6つ目の在京大使館となった。
 ポリネシアに位置するサモアは、大相撲のかつての横綱武蔵丸や曙、あるいは小結南海竜、南洋桜などのふるさとである。島嶼諸国域内では存在感の大きい国だが、一般日本人にとってはミクロネシアのパラオやマーシャルなどに比べて、馴染みが薄いかもしれない。大使らは大使館の設置で一気に日本での知名度を上げたいと、これからの諸活動に意欲的だ。
 一方、日本に大使館を置かずに、大使だけを送り込んできたのがトンガ王国だった。在キャンベラの大使を務めるトゥポウトア皇太子が日本も兼轄する大使となって来日、この1月に信任状の奉呈を済ませた。オーストラリアからの兼轄ではいささか遠い気もするが、日本からは昨年1月に高瀬特命全権大使を派遣しているので、これに対する返礼的行為を急いだのだろうか。それとも、東京に大使館を開設したサモアへの遅れを若干でも補おうとしたのかもしれない。なにしろトンガとサモアの間にはポリネシア諸国の中で盟主を競うライバル意識のような感情があるからだ。サモアが東京に大使館を開いたのは、一刻も早くサモアに日本大使館を置いて欲しいとの強烈なアピールだったのだろう。日本人もこの両国の微妙な意識の違いを理解しておかないと、相手に思わぬ不快感を与えかねない。
 同様なことは、ミクロネシアでもあった。サモア大使館のお披露目から間もない2月初旬、貞岡義幸日本大使がパラオに赴任した。一昨年のミクロネシア連邦、昨年のトンガに続いて、島嶼国への常駐大使としては5番目となる。ようやくパラオにも大使を派遣できて、とても喜ばしいと私自身は思っている。だがマーシャル諸島は、これには不快なのである。「ミクロネシア3国の中で、我が国にだけ正式な大使を派遣しないのは差別だ」と。日本がミクロネシア連邦への大使派遣を決めたとき、パラオもまた不快感を露わにした。だがそのとき政府は、「国内事情によって、同時期に複数公館の開設はできないから、まずは一つずつ。次はパラオだから」とパラオ側に説明したのだという。しかし、日本では政権交代が起こって外交方針の先行きが不透明な時期ゆえに、マーシャルには同じような説得ができない。日本は巨大国家だと思っている島嶼国に、懐の寂しい国内事情を理解してもらうのはそう容易いことではないようだ。
 域内の大国パプアニューギニアも、3月末に大使館の披露レセプションを計画している。こちらは、目黒に大使館ビルを新築して、三田国際ビルの中にあった大使館から引っ越したばかりだ。大使を派遣する6つの島嶼国の中で、自前の大使館ビルを造ったのはもちろんこの国だけ。人口5百万人超、このところミネラルブームに沸く資源大国だからこそ実現できた実館建設だったが、それだけ日本との関係強化を重視している証しだとも言えるだろう。小さな島嶼政府が少ない予算を割いて大使館開設を試みるのも、同様の思いからだ。
 フィジーのクンブアンボラ前駐日大使は、「東京の格は、国連のニューヨークやロンドンよりも上、キャンベラと一、二を争う重要ポストだ」と言っていた。確かに彼自身は外務大臣に、パプアニューギニアのマウイ大使は外務次官になるために離日したことを思えば、あながち東京が最高ポストだというのもリップサービスだけではないだろう。島嶼各国が日本へ向ける視線は、これほど熱いのである。

 とはいえ、各国が求める内容にはそれぞれ違いが大きい。これまで在京の島嶼国大使らは、定期的に意見交換や情報共有のための昼食会を開いており、私も何度かその席に招かれたが、和気藹々の一方で、決して島嶼諸国一丸とはならない雰囲気がいつも漂っていた。「皆と一緒に何かをやるのは、無理ですね」といった本音が、会合後の私の耳にも届く。私は各島嶼各国をPIF諸国として一括して扱うのは「要注意」と、しばしば指摘してきたが、その実情が、こんなところでも見られるのである。

(小林 泉)

刊行書籍のご案内

太平洋諸島センター
Copyright © 一般社団法人太平洋協会 All Rights Reserved.