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137-<パラオ短信>パラオ=アメリカ、コンパクト援助延長協定に調印

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<パラオ短信>

パラオ=アメリカ、コンパクト援助延長協定に調印

上 原 伸 一 (うえはら しんいち)


 パラオとアメリカは、2009年9月31日までで終了した、コンパクト(自由連合協定)に基づく経済援助の延長に関し協議を続けていたが、2010年9月3日に両国政府の間で合意、調印した。期間は、2024年までで、1年の暫定措置として既に支払われた2010年度直接財政援助1325万ドルも本協定に含みこまれた。従って、協定期間は15年間となる。
 コンパクトに基づく経済援助の延長交渉は、先のレメンゲソウ政権の時代から行われていた。しかし、レメンゲソウ大統領の任期が2008年末までであり、パラオ憲法の規定により大統領は連続2期までしか勤められないことになっているため、2009年の政権交代が決まっていたこともあり交渉は進展しなかった。ジャンセン・トリビューン現大統領は、就任と同時に精力的に交渉を行い、2010年初めには基本的な合意に至っていた。その後詳細の詰めが行われ、9月3日に経済援助延長の協定に調印した。協定名は、「自由連合協定432項の再検討に基づくアメリカ合衆国及びパラオ共和国協定」。自由連合協定432項で15年目、30年目、50年目に再検討することが定められているからである。今回は15年目の再検討であり、同項の規定に合わせて30年目までの15年間の経済援助が定められれた。
 1994年発効の自由連合協定では、当初15年間の経済援助が定められ、その中で7000万ドルの信託基金が供与され、この運用益で16年目以降の財政(の不足分)を賄うことになっていた。信託基金運用は比較的順調ではあったが、物価上昇や期待通り伸びない歳入などのため、運用益では不足が見込まれるため、パラオ側は、先にコンパクト経済援助を延長したミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国同様に経済援助延長を強く求め、アメリカもこれを受け入れた。
 今回の協定による援助金の内訳と金額については、付表を参照されたい。コンパクト道路維持のための援助は、300万ドルと定められているが時期は明記されていない。また、郵便事業、民間航空運航関連、気象サービス等についても付帯協定で援助を約束しているが、金額等は示されていない。従って、パラオの新聞で、総額2億5000万ドルと報じられているのはこれらを見込んでの総額と思われる。なお、現在も行われているアメリカの連邦助成プログラムによる援助も2024年度まで延長継続することが付帯協定で定められた。この援助金は、他のコンパクト経済援助とは別枠で、その年毎の情勢に応じて定められるもので、付表にも入っていなければ、パラオの新聞で報じられている2億5000万ドルという額にも含まれない別枠になっている。付表は調印された経済援助延長協定に基づき筆者が作成したもの。
 今回協定では、アメリカ側は、パラオの経済自立を求めて様々な条件をつけている。アメリカ自身も財政状況は悪く、2024年に行われる再検討にあたり、少しでも負担を少なくすることを求めてのものである。
 それぞれの援助金について目的に応じた使途を求めているのは当然だが、特定目的ではない直接財政援助金について、信託基金からの戻入金と共に、州政府援助、大統領府・国会・裁判所の経費への支出を禁じている。さらに、信託基金からの戻入金については、毎年1500万ドルを教育、健康、公共安全管理に割り当てることを定めている。また、インフラ維持に関しては、パラオ側からも毎年60万ドルの拠出を求めており、これが達成されなかった場合は、アメリカからの直接財政援助金からその不足分を補うこととしている。
 さらに、パラオの経済自立に向けて、「諮問会議」(”Advisory Group”)が設けられることになった。メンバーは5人で、アメリカ、パラオ両政府がそれぞれ2人を選任し、もう1人はパラオ政府が推薦するパラオ非在住の3人以上の候補の中からアメリカ政府が指名することになっている。「諮問会議」は、毎年パラオとハワイで1回ずつ会合を持ち、経済財政改革案を出すと共に、毎年5月末を目処に、両政府の経済協議のために、改革案実行についての報告書を作成することとしている。両政府経済協議で、パラオの経済財政改革の本質的進展が認められない場合は、改善が認められるまで直接財政援助の支出を延期することになっている。改革の具体例として、通常歳費の削減や政府職員数並びに政府職員給与の削減等を挙げている。
 財政赤字が恒常化しているパラオの経済自立のためには、小さな政府実現並びに歳出削減は、ある意味まともな要求である。しかし、給与所得者における公務員割合の高いパラオで、公務員数並びに給与総額の削減は市場における購買力の低下を招き、パラオ経済のマイナス要因ともなる。観光を始めとする民間経済が発展すれば政府職員給与を一定水準で賄うことは不可能ではない。小さな政府を強制する今回の協定は、パラオ経済の縮小再生産に繋がりかねず、果たして良い処方箋といえるのか。アメリカの都合が先に立ちすぎている感がある。ちなみに、昨年12月22日からデルタ航空が成田ーパラオ間に直行定期便(週4便)を就航させ、観光業者はこの年末年始はホテル不足で大わらわだったとのことである。


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