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144-新刊書紹介

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──新刊書紹介──────────────────────────────
JIPAS研究シリーズ4
黒崎岳大 著『太平洋島嶼国と日本の貿易・投資・観光』
ISBN978-4-902962-21-5 C3022 /A5版 139頁 \2,000
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 近年、島嶼国地域のビジネス環境が、大きく変容しつつある。例えば、パプアニューギニア(PNG)で大規模な液化天然ガス開発がはじまり、それに関連する産業の投資機運が一気に高まった。2014年7月に安倍総理がPNGを公式訪問した際、多くの企業代表者が同行したのも、その現れだ。観光面でも、日本人には人気の高かったパラオにデルタ航空が2010年から直行便を飛ばしはじめ、その知名度をさらにアップさせた。まだ日本人には馴染み薄のクック諸島やサモアでも観光業は着実に発展し始めており、その先に日本市場を見据える戦略性が見えている。
 もちろん、すべての島国で国内産業が順調に育っているわけではない。高い輸送コストや人材不足などが理由で、日本市場に容易に参入できない国々が多いのは従来通りだ。
 しかし、これら条件の悪いビジネス環境の中でも、試行錯誤を繰り返しながら、なんとかビジネス拡大に結びつけようと努力する島嶼国もある。例えばトンガでは、日本の商社と協力しながら様々な農産品販売を成功させようとチャレンジしている。ミクロネシア連邦では、再保険制度を利用した節税対策を法制化し、日本企業を積極的に誘致する戦略を打ち出した。フィジーからのミネラルウォーター、キリバスの塩、PNGのコーヒー等々、小規模ながら今までにはなかった対日ビジネスが少しずつ芽生え始めている。
 ところで、これまで日本での太平洋島嶼国研究といえば、文化人類学を中心とした地域研究や安全保障に関わる国際政治、経済協力などのテーマが主で、ビジネス分野に関する詳細な追究や分析はほとんどなかった。それは、島国が抱える経済環境としての障害(国土の狭隘性・拡散性、主要国際市場からの遠隔性)が、あまりに大きくクローズアップされ、ビジネス対象地にはならないとする先入観念が強すぎたからだろう。確かに日本側から見ると、埋蔵天然資源への魅力を除けば、島嶼国の小規模ニッチ産業などへの関心は薄い。これも仕方ない現実だが、島々の経済開発や地域協力に関わろうとするならば、島嶼国が試みる日本へのメッセージを的確に読み解くことが大事である。日本と島嶼国との21世紀における新しい関係を考えるのならば、なおさら重要なことだ。
 その観点からしても、本書が一冊の書籍として世に出たことの意味は大きい。ここでは、日本と島嶼国とのビジネス環境をめぐる問題について、経済データを基に分析し、その課題と可能性について考察されている。また、過去10年間にわたる貿易動向や、島嶼国からの個別産品の地域別特徴、日本の観光客をターゲットにした各国の観光戦略など、個々の島嶼国が現在抱える産業開発上の問題点が明確に指摘されており、数字を基にした論考が説得力を強めている。
それゆえ本書は、ビジネス関係者はもちろん、日本と太平洋島嶼国間の新たな関係性に関心を持たれる方であれば、是非とも備えておきたい一冊である。

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