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144-<パラオ短信>2014年上期は観光客増、記録更新のペース

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<パラオ短信>

2014年上期は観光客増、記録更新のペース

上原伸一(うえはら しんいち)


パラオでは、ここ暫く殺人や傷害といった凶悪犯罪が多発していたが、今年前半は、幸い外国人に対するその手の凶悪犯罪はおきなかった。2013年は前年に比べ観光客が11.5%も減少し、観光収入に頼るパラオ経済への影響が心配されたが、今年に入ってからは観光客は急速に回復し、1~6月の集計では、今までの年間記録を上回る勢いを示している。パラオの近況を簡単に報告する。

(1)教育大臣指名承認
 昨年1月に3期目をスタートさせたレメンゲソウ政権は、教育大臣が空席のままであったが、4月7日に大統領が指名したシントン・ソアラブライ氏を上院が承認し、以下の通り閣僚が全て決まった。
司法大臣              アントニー・ベルス副大統領(兼務)
自然資源・環境・観光大臣      ウミ-・センゲバウ
社会・文化大臣           バクライ・テメギル
保健大臣              グレッグ・ニルマン
財務大臣              エルブエル・サダン
公共基盤・産業・商業大臣      チャールズ・オビアン
国務大臣              ビリー・クアルテエイ
教育大臣              シントン・ソアラブライ

(2)観光客急速に回復
 2013年の観光客数は105,066人で、最高を記録した前年から11.5%もダウンした。観光客の中心を占める日本と台湾が共に減少、とりわけ台湾は前年比34%減と大幅なダウンであった。さらに、2004年以降急速に伸びて2006年からは日本、台湾に次ぎ3位を占めていた韓国も13%強のダウンで先行きが心配された。
 今年に入り観光客は回復し、1月から6月まで毎月前年を上回っている。その結果、今年前半の観光客数は61,355人で、年間最高を記録した2012年の前半57,446人を超えており、年間記録更新の可能性がある。日本と台湾は共に一昨年の水準並に回復している。ただし、韓国は昨年以来の減少傾向が続いている。6月は昨年を上まわっているが、他の月は昨年より減少しており、前半で12.3%の前年比減となっている。韓国に変わり、急増しているのが中国である。中国からの観光客は2010年までは1,000人に満たなかったが、2011年に1,699人となり、2012年4,471人、2013年8,804人と急激に増えている。今年は前半で9,159人と既に昨年1年を超えており、7,107人と減り続ける韓国を追い抜き、日本、台湾に次いで3位になっている。

(3)アイミリキ新発電所完成
 2011年11月の火事で損壊したアイミリキのイプセコ発電所の隣に、日本の無償援助で建設されていたアイミリキ発電所が完成し、4月23日に田尻駐パラオ日本大使や児玉大洋州課長等が出席して開所式が行われた。既に稼働して電気の供給を行っている。これにより、パラオの電力供給量は17MWから27MWとなった。

(4)外国人労働者問題
 パラオでは外国人労働者が、ビジネス分野から国の行政部門に至るまで広く使われている。今年6月18日時点で、パラオ在住外国人は6,302人で5,246人が労働許可証での在住で、その扶養家族が335人である。その他は、政府等との契約による者263人、宗教関係119人、一時的許可による者が103人、投資許可による者が76人、学生が85人で、JICAのボランティアや台湾技術者などの特別許可による者が75人である。(*1)

 国別では、フィリピンが4,076人と圧倒的で、以下、バングラデシュ409人、中国361人、インドネシア287人、日本287人、台湾230人、アメリカ181人、FSM125人、韓国93人、ネパール32人、マーシャル諸島共和国12人等となっている。
 2,013年の人口は17,501人と発表されている。外国人の労働力なしではやっていけないのは明白である。しかし、パラオはアメリカの「人身取引報告」(*2)で2009年に初めて取り上げられて以来、3段階中の第2段階に分類されている(*3)。この分類で、一番良いのは第1段階だが、第1段階でも人身取引がないことを意味しているのではなく、「政府がその事実を把握し、人身取引犠牲者救済法の最低基準に沿って対応し、問題解決の努力をしている」ことを意味している。パラオに対しては、女性への売春強要や労働者一般に対する過酷労働の強制が見られ、政府の対応は不十分で不適切とされている。
 実際、マッサージパーラーやらカラオケ店での売春が摘発されている。また、未熟練労働者に対する過酷な労働実態や家事サービス労働者への問題行動などが今まで指摘されてきた。フィリピン労働者からは、低賃金、長時間労働の問題などが提起されており、フィリピン政府もこれを問題視し、一時女性及び未熟練・低熟練労働者の就労のためのパラオ渡航を禁止していた。
 2月にフィリピンを訪問したアントニオ・ベルス副大統領兼司法大臣は、この問題についてフィリピン側担当部局と協議を行った。ベルス副大統領は、パラオにとってフィリピンからの労働者は必要であると訴え、サウジアラビアや他の大国の様な賃金を支払うことはできないことへの理解を求めた。フィリピン側は、2国間協定で労働者の保護を図ることにより、問題を解決していく意向を伝えた。現時点では、家事労働サービスを除いてフィリピン側の禁止措置は行われていない。

(5)その他
〇2011年非常事態宣言違憲訴訟判決:2011年11月のアイミリキの発電所火事に対し、当時トリビヨン大統領が出した非常事態宣言が憲法に違反するとの訴えに対する最高裁判決が4月1日に出され、憲法違反と認められた。パラオ憲法8条14項では、「戦争、外部よりの侵略、人民反乱、または自然災害によってパラオ市民の相当数の声明、財産が脅かされる場合はいつでも、大統領は非常事態を宣言し、生命、財産の脅かされている者を即座に具体的に救援するのに必要な立法権限を暫定的に持ちうる。」と定めているが、発電所火事は自然災害ではないので非常事態宣言を発することはできないとの訴えがなされ、最高裁判所はこれを認めた。
違憲訴訟に対しては、トリビヨン前大統領側は、国会が非常事態宣言を追認したこと、パラオ語の”KERRIOR”と言う言葉は英語よりも広い意味で、火事のような場合も含むことから、訴訟を却下すべしと主張していたが裁判所はこれを認めなかった。トリビヨン氏は異議を申し立てているが、判決を下した判事に対する倫理違反の申し立ては却下されている。

〇空港駐車料金法案:6月24日空港駐車場の駐車に対し、2ドルを徴収する法案が下院を通過した。上院で認められ、成立すれば、一時駐車から料金を徴収するパラオ初のケースになると思われる。

〇ベトナム人漁師逮捕:3月19日にカヤンゲルのゲルアンゲル礁(保護地域)で違法に漁をしていたベトナム人8人が逮捕された。手続きの上、6月に帰国した。

(*1) 数字は『ティア・ベラウ』2,014年6月23日号による。『ティア・ベラウ』は、移民局の記録によるとしている。
(*2) http://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/index.htm
(*3) 日本も第2段階に分類されており、アジアの途上国からの女性や子供に対する性的労働や、労働者に対する強制労働などが問題として指摘されている。      (うえはら しんいち)


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