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146-巻頭言「第7回 島サミットが終わって」

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巻頭言

第7回島サミットが終わって

小 林 泉(こばやし いずみ)


 この5月に開催された太平洋・島サミットが終了して、はや三ヵ月。7回目ともなると、マンネリ化から脱出して何を新しい話題にして話合うべきなのか、焦点を定められぬまま準備が進められていた、というのが私の実感だった。
 しかし、終わってみれば前回、前々回の単なる踏襲に終わらない特徴あるサミットとして、島嶼国側にも日本側にも良い印象が残る政治イベントになった。また、日本と島嶼諸国の間に横たわる外交的な諸課題も浮き彫りになり、結果としてこれまでより一歩踏み込んだ対島嶼国認識が日本政府の中に芽生えたように思える。これも、地球的俯瞰外交を進める安倍政権の成果だといえよう。
 三年前を思い起こせば、多くのマスメディアが島サミットの意義を「中国の太平洋進出への対抗措置」として喧伝した。そのお陰で、報道量が格段に増えたのは、いずれにせよ喜ばしいと言っていい。だが、島サミットは1997年来のイベントであって、「中国への対抗」が開催動機ではないことを、ここであらためて指摘しておきたい。
 実際に今回は、必ずしも中国がらみではない島サミットへの関心が、日本国内に高まっていた。その理由の一つには、島サミット直前の4月に、天皇・皇后両陛下がミクロネシア・パラオを慰霊訪問されたことを挙げられる。また、昨年9月に、現役総理としては29年ぶりになる安倍首相のパプアニューギニア訪問が実現した。さらには、本会議の開催地が震災復興の途にある福島県・いわきだったことも注目度を上げた要因だった。
 そして今年の島サミットは、幾つか前回までとは異なるところがあった。その一つは、会議直前に日本がニウエと正式な外交関係を樹立したこと。太平洋諸島フォーラム(PIF)の正式メンバー国だが、これまでニュージーランド(NZ)の自治領として、日本は国家承認していなかった。同じ政治的地位にあるクック諸島と三年前に外交関係を結んだのに続いての処置だが、なにせ人口が1,500人しかいないので、国家として扱って良いものかどうか考えた末の結論だったのである。これでPIF加盟国は12プラス2地域といわずに、14ヵ国と言えるようになった。
 二つには、島サミットで日本の首相とともに共同議長を務めるのは、豪・NZではなく、「島嶼国首脳にする」と確認しあったことである。以前に議長を出した国に順番が廻った場合は、他国に譲ることも決めた。これは、島サミットが日本と島嶼国の会議だとする、その理念を明確化しようとするものだ。
 三つ目は、第5回、6回の島サミットに欠席(招待しなかった)したフィジーのバイニマラマ首相が出席したこと。これにより、会議の雰囲気は以前にはない緊張感が漂った。そして日本政府は、島嶼諸国の国際関係が決して一枚岩ではない内実を身をもって理解したのである。
 というのも、そもそも島サミットの正式名称は「日本PIF首脳会議」として始まったが、フィジーは、2009年にPIFの資格を停止されたまま、いまもメンバー復帰していない。つまり、日本とPIFの首脳会議であるとするならば、フィジーに参加資格はない。そのPIFは、昨年9月に民主選挙によって誕生したフィジーに対しメンバー復帰を呼びかけているが、バイニマラマ首相は、「島嶼国でない豪、NZが正式メンバーでいる限り、復帰の意思はない」と明確に宣言している。島嶼地域がこんな状態になるとは、日本政府には想定外だった。それだけに、この度の経験は、今後の会議をさらに実情に見合った形に変えて行く良い機会になった。
 そして、もう一つ注目しておくべきは、関連イベントとして太平洋協会とJETROが共催した「日本・太平洋経済人会議」だ。いずれの島嶼国首脳も、自国の経済開発を望んでいるのに、これまで来日してもほとんど経済界の首脳と交流する機会がなかった。その物足りなさ感を払拭するため、本会の北野貴裕会長の音頭で島嶼国に関心を示す業界トップ企業20社の首脳を集め、会合を開いたのである。首脳たちは、それぞれの関心企業との会話に熱心で、いわゆる形式的、セレモニー的な首脳会議にはない充実を感じていた。
 首脳交流をしたからといって、日本企業の投資や進出がすぐさま始まるわけではもちろんない。しかし、政治交流の次に、民間活動が始まらなければ、実態ある国家間関係は育たない。これを熟知する北野会長は、投資や産業進出だけでなく、研修生やインターンの受け入れといった人材育成部門での民間協力も大切だと、あれこれ構想を練っている。この会議で、さっそく実った成果もある。ホンダ技研とマーシャル政府が締結したソーラーエネルギー使用の電気自動車プロジェクトがそれだ。こうした民間の力を引き出す機会を作り出すことこそ、本会に求められている活動なのだろう。
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