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145-巻頭言「戦後70周年と太平洋・島サミット」

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巻頭言

戦後70周年と太平洋・島サミット


 第2015年が始まり、私の周辺は何かと騒がしくなっている。というのも、今年の前半期には日本で行われるオセアニア諸国に関連するイベントや会議が次から次へと目白押しだからである。
 その中でも、5月22日から福島県いわき市で開催される「太平洋・島サミット」は、最大級の政治イベントだ。1997年以来、3年ごとの島サミットは今回で7回目。我が国の総理が太平洋諸島フォーラム(PIF)に加盟する全ての島嶼国大統領・首相を招待して実施する。それだけに、日本の島嶼国政策や島嶼国への外交姿勢が、ここに集約されて現れるのである。島嶼各国が、日本への期待を日に日に高めている所以はここにある。それゆえ政府には、しっかりとした政策形成や会議運営の準備作業を進めて欲しいものだ。開催県の福島では、昨年の秋から既にシンポジウムとか太平洋舞踏祭といった幾つかのプレイベントを始めている。それは、開催地ぐるみで島サミットを盛り上げようとする、地方からの援護射撃だ。
 一方、島サミットでの討議内容や会議進行について決めるのが、3月初旬に予定されている高級実務者会合(通称SOM:Senior Officials Meeting)である。ここでは、各国の担当局長か次官クラスが来日して、会合の中身を詰めて行く。よって島サミットの成否は、実際にはこのSOMで決まると言ってもいいほどなのだ。
 さらにもう一つ極めて重要なのは、フィジーの扱いである。日本は、軍事クーデタ政権だとして、第5回、6回の島サミットにバイニマラマ首相を招待しなかった。しかし、その首相を、今回は招待しないという選択肢はあり得ない。昨年9月に民主的選挙が実施され、圧倒的な国民の支持を得て誕生したのがバイニマラマ首相なのだから。さらに言えば、PNGとともに島嶼諸国の中心的な存在であるフィジーの参加を恒常的に欠いた島サミットであれば、その開催意義は半減、いやそれ以上に失われるからである。もちろん、日本政府もフィジー首相を招待者リストに加えているだろう。しかし問題は、ただ招待状を出しただけで島サミットに参加してくれるとは限らない。駐日のマタイトンガ大使は「いきなり招待されても、我が首相は来ないでしょう」と、私の質問に答えている。つまり、島サミットの前に、日本がバイニマラマ首相を招くか、それなりの人物をフィジーに派遣して、止まっていた首脳関係を修復する必要がある。それなくば、フィジーの外交的面子が立たないからだ。
 3月中旬には、仙台で第3回の国連防災世界会議も予定されている。この会議には、世界各国から首脳クラスが出席するとされているが、島嶼国からも既に何人かが参加するとの情報が入っている。来日のついでに東京に立ち寄る島嶼国首脳がいれば、彼らに対してもそれなりの対応が必要となるから、これにもまた時間をとられることになるだろう。
 そして4月には、天皇・皇后両陛下がパラオを訪問する。ミクロネシアの島々に、「慰霊の旅」に出たいとする陛下の長年の強い願いがようやく叶うことになる。陛下ご自身はかねてから、かつて日本の委任統治領だった島々への訪問を望んでいた。だが、それが実現しなかったのは、ご訪問に耐え得るだけの宿泊施設、交通手段がないとする政府の判断だった。平成17年6月、米領となって開発が進んだサイパン島だけの訪問は実現したが、陛下はそれ以後も「他の島々にも行きたい」との思いを持ち続けていた。1月7日付の産経新聞には、『根負けした侍従長』との見出しで、そのあたりの事情が紹介されている。今回、陛下がご訪問を予定するパラオのペリリュー島は、約2万6000人の戦死者を出した南洋群島最大の激戦地の一つだった(当時、その島に住んでいた約900人のパラオ人は、日本軍の手配により、全員が本島に避難させられ、犠牲者は出なかった)。そして、国家への忠誠心を守り抜いた、そのあまりにも激しい戦いに、米軍はここを「天皇の島」と呼んだ。こうした戦没者の思いを、陛下はひとときも忘れることなく、持ち続けてこられたのであろう。
 このように、これだけオセアニアに関する行事が次々に続くのだから、政府の担当部局はもちろん、その他の関係者らにとっても忙しい日々になるだろう。しかし、いくら忙しくとも、いずれも関連する重要事項だけに、どれ一つとしておろそかに出来ないし、失敗も許されない。これら事項を全て大成功裏に導かねば、官民が1997年の第1回の島サミット以来続けてきた対島嶼国交流、島嶼国外交への努力が台無しになるからである。
 そして今年は、戦後70周年にあたる時期である。それゆえ安倍首相には、総理大臣談話として、このタイミングで開催される島サミットに向けて、確固たる対島嶼国外交のビジョンを示して欲しいものだ。 (小林 泉)


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