一般社団法人太平洋協会のウェブサイトです

140-<パラオ短信>選挙の年、9月正副大統領予備選挙に

  • HOME »
  • 140-<パラオ短信>選挙の年、9月正副大統領予備選挙に

<パラオ短信>

選挙の年、9月正副大統領予備選挙に

上原 伸一


 今年はパラオの総選挙の年である。11月6日に大統領、副大統領、上院、下院の選挙がまとめて行われる。憲法改正の発議があれば、改正の是非を問う国民投票も同時に行われる。大統領及び副大統領の選挙については、3人以上の立候補があれば、事前に予備選を行い、上位2名が本選に進む。今年は、正副大統領共に3人以上の立候補があり、9月26日に予備選挙が行われる。
 大統領、副大統領選については、2004年の憲法改正でランニングメイト制(アメリカの大統領選のように大統領候補と副大統領候補が一組となって選挙されるシステム)になり、2008年の選挙はパラオで初めてランニングメイト制による正副大統領選が行われた。これにより選出されたのが現職のジャンセン・トリビヨン大統領、ケライ・マリウル副大統領である。しかし、2008年の総選挙時に憲法改正の国民投票が行われ、正副大統領選挙に関するランニングメイト制が廃止されたので(憲法改正の詳細については、本誌2009年2月通巻133号参照)、今回の正副大統領は、それぞれ個別に選出される。
 大統領選立候補者は3人。現職のジャンセン・トリビヨン大統領は、2008年にランニングメイトとして共に立候補した現職副大統領のケライ・マリウル氏と正副大統領のチームを組んで今回再選に挑む。大統領当選直後は、国民の期待を受けて大変人気が高かった。当初は、財政赤字に対応すべく、厳しい予算編成をしていたが、3年目から予算規模が膨らんできており、議会との軋轢が高まっている。大統領になるまで、台湾大使を務めており、叔父で戦後パラオ政界の実力者であった故ローマン・メチュール氏が貿易を通じて早くから台湾との関係を築いていたこともあり、台湾との関係は深い。現実に、トリビヨン政権になってから台湾からの投資や借款がかなり増えている。また、台湾との直行便も増え、台湾からの観光客は2010年以降大幅に増えて、日本、韓国と並び、パラオの観光業を支えている。なお、アメリカとの自由連合協定に基づく経済援助の延長については、2010年9月3日にアメリカ政府と合意に達したが(詳細については本誌2011年2月通巻137号参照)、アメリカ議会の同意が得られず、再三アメリカに説明に行く等苦労していたが、間もなく米議会の同意が得られる見込みとなっている。
 現上院議員で元大統領のトミー・レメンゲソウ・Jr.氏は1期空けての立候補となる。憲法の規定により、大統領は連続して2期までしか務める事が出来ない。レメンゲソウ氏は、2001年から2008年までの2期8年大統領を務め、2008年の選挙では、当時の閣僚やスタッフと共に上院に立候補し、上院多数派を形成しようとしたが、当選したのはレメンゲソウ氏のみであった。(*1)期あけて今回、改めて大統領選に立候補した。副大統領として、誰と組むかということについては特段公言していない。チン氏(レメンゲソウ大統領2期目の副大統領)から、大統領在任中の台湾からの援助金の使途不明があると追及を受けている。
 パラオで最初の女性上院議員であり、最初の女性副大統領であるサンドラ・ピエラントッチ氏も大統領選に立候補した。彼女は、レメンゲソウ政権1期目の副大統領であった。現政権でも当初は、国務大臣であったが、トリビヨン大統領と意見が合わず罷免されている。2004年の選挙では、大統領か副大統領か最後まで立候補を迷った。最終的に副大統領に立候補し、カムセック・チン氏に敗れている。パラオでは女性が表立って政治リーダーになることは少ないが、選挙においては強い力を持っている。伝統社会の男性酋長の任免は女性酋長達によって行われる。選挙の際の女性酋長の力は大きく、2000年にピエラントッチ氏が副大統領に当選したのはコロールの女性大酋長ビルンの支持が大きな力になったと言われている。
 前回大統領選において予備選挙で1位になりながら、本選挙でトリビヨン氏に逆転されたチン氏に対しては支持者から大統領への立候補を求める声がかなり出たが、チン氏は今回上院に立候補している。
 副大統領には4人が立候補している。現職のケライ・マリウル副大統領、スティーブンソン・クアルティ厚生大臣、ジャクソン・ギライガス経済産業大臣、アントニオ・ベルス前上院議員(*2)である。現役の大臣二人が、いわば現政権に弓引く形で立候補している。前回正副大統領選挙では、予備選挙で2位であったトリビヨン=マリウル陣営は、予備選挙で落ちた候補陣営を中心に選挙協力を求め、その力で本選挙での逆転を果たした。いわばその見返りとして大臣等の枢要な地位を与えることが行われている。実際、ギライガス氏は、2008年にジョシュア・コシバ氏と組んで副大統領に立候補し、予備選で4位落選している。ちなみに、コシバ氏は自由連合協定再検討大使に任命されている。
 いずれにせよ、前回同様予備選後の合従連衡が勝負を決する可能性が高い。

 

<上院議員候補> 全国1区定員13名。*は現職。
Philip Reklai
J.Uduch Sengebau Senior
John B. Skebong
Caleb Otto
Joel Toribiong *
Moses Y. Uludong
GaleN. Gnirmidol
Alfonso Diaz *
Milb Metuchl *
Regis Akitaya *
Alan R. Sied
Kathy Kesolei *
Dilmei Olkerir
Earnest Ongidobel
Salvador Remoket
Raynold Arnold Oilouch *
Ismael R. Worswick
Camsek Elias Chin
Mark U. Rudimch *
Hokkons Baules *
Regina Mesebeluu *
Laurentino Ulechog
Surangel Whips Jr. *
Paul Ueki *
Gregorio “Greg” Ngirmang
Roman Yano
Rukebai Kikuo Skey Jnabo
Robert Misterio Becheserrak
Mason Ngirchechebangel Whipps
J. Risong Tarkong
Alan T. Marbou
Santy Asanuma

<下院議員> 各州1名。*は現職。

1.コロール選挙区 (Koror State)
Alexander Merep *
Salvador Tellames
Felix Francisco
2.アイライ選挙区 (Airai State)
Tmewang Rengulbai *
Frank Kiyota
3.ガラルド選挙区 (Ngaraard State)
Gibson Kanai *
Priscilla Subris
Martin Sokau
4.アルモノグイ選挙区 (Ngeremlengui State)
Swenny M. Ongidobel *
Portia K. Franz
5.エサール選挙区 (Ngchesar State)
Secilil Eldebechel *
Sabino Anastacio
Eldebechel
6.カヤンゲル選挙区 (Kayangel State)
Noah Kernesong *
Edwin Chokoi
Florencio Yamada
7.アルコロン選挙区 (Ngarchelong State)
Marhence Madrangchar *
Masao salvador
Don Bukurou
8.オギワル選挙区 (Ngiwal State)
Eugene Usin Termeteet
Francis X.Llecholch
Masasinge Arurang
Pablo Rrull
9.マルキョク選挙区 (Melekeok State)
Lencer P. Basilius *
Brian Malairei
10.アイメリーキ選挙区 (Aemeliik State)
Kalistus Ngirlurong *
Marino O. Ngemaes
11.ガラスマオ選挙区 (Ngardmau State)
Rebluu Kesolei *
Lucio Ngiraiwet
12.ガスパン選挙区 (Ngatpang State)
Jerry Nabeyama *
Lee Otbed
13.ペリリュー選挙区 (Peleliu State)
Jonathan “Cio” Isechal *
Joseph Giramur
Charles Desengei Matsutaro
14.アンガウル選挙区 (Angaur State)
Horace N. Rafael *
Mario Gulibert
15.ソンソル選挙区 (Sonsorol State)
Celestine Yangirmau *
16.トビ選挙区 (Hatohobei State)
Wayne Andrew *
Sebastian R. Marino

*************************************************

(*1) 当時のレメンゲソウ内閣からは、アレキサンドダー・メレップ氏が下院(コロール州)に当選している。
(*2) 2008年の選挙では、通期で3期以上国会議員を務めた者は国会に立候補できなかった。


刊行書籍のご案内

太平洋諸島センター

Copyright © 一般社団法人太平洋協会 All Rights Reserved.