<パラオ選挙結果>
ジャンセン新政権スタート
-”チェンジ”を選んだパラオ国民-
上原伸一(うえはら しんいち)
筆者は、9月の正副大統領の予備選挙の際に、パラオ取材を行った。その時の様子も含め、選挙結果をレポートする。
大統領選に立候補したのは、最終的に4組となった。副大統領(当時)カムセック・エリアス・チン=上院議員(当時)アレン・シード(前者が大統領候補)、上院議長(当時)スランゲル・ウィップス・シニア=官房長官(当時)ビリー・クワルティ、上院議員ジョシュア・コシバ=ペリリュー州知事ジャクソン・ギライガス、台湾大使(当時)及び弁護士ジャンセン・トリビヨン=下院議員(当時)ケライ・マリウルである。候補者が3組以上の場合には予備選挙が行われることになっており、9月23日に投票が行われた。
最終的な予備選挙の結果は、1位チン氏3027票、2位ジャンセン氏2526票、3位スランゲル氏2248票、4位コシバ氏1387票で、チン氏とジャンセン氏が本選に進んだ。なお、予備選挙の登録選挙人総数は14050人、総投票数は9295票で、投票率は66%であった。前回2004年の選挙では、当時現職のレメンゲソウ氏の再選が確実視されていたため、予備選挙の投票率は57.7%と低かったが、それ以外は、基本的に70%を超えている。今回、激戦であった割には投票率が低かったといえよう。10時過ぎから急に天候が崩れ、大雨になった影響があったのかもしれない。組織選挙に弱く、人気に頼って広く人々に呼びかける戦術をとっていたスランゲル氏にとっては、投票率の低さが災いした部分があろう。
また、レメンゲソウ前大統領は、自ら上院議員に立候補するとともに、閣僚の多くが上院を中心に議員に立候補した。議会で一定の勢力を保つことにより、大統領を退いた後も、政治的な力を維持しようと図ったと思われるが、本人が11位での当選で、レメンゲソウ内閣から議員に当選したのは、下院(コロール州)のアレキサンダー・メレップ氏だけであった。ここにも、“チェンジ”の風が大きく吹いた。
下院は各州1名、総数16名からなる。任期制限により、現職4名が下院に立候補したが、1名が落選、現役の当選は、カリストス・ニルトロン氏(アイメリーキ州)、ノア・イデオン氏(オギワル州)、ジョナサン・ショー・イサエル氏(ペリリュー州)の3名となり、大半が新しいメンバーとなった。また、コロール選出のジョエル・トリビヨン氏は上院に転出して当選。なお、下院でも、直接書き込みによる当選がソンソル州であった。
上下両院の当選者は11月下旬にそれぞれ集会を行った。上院は、ミルブ・メチュール氏を、下院はアレキサンダー・メレップ氏を議長に選出するなど、院内の人事を早々に決めた。従来、独立以前からの派閥争いがあり、なかなか院内人事が定まらなかった。議員の大幅な“チェンジ”により今までの派閥争いは快勝し、新しい動きが始まりつつある。1月末には、大統領が指名する閣僚の承認審議が上院で行われる。こちらも、今迄は難航することが通常であったので、どのような判断が下されるか注目される。
(23)10条7項、司法指名委員会のメンバー→「司法指名委員会は7名からなり、そのメンバーは全てパラオ共和国憲法3条に定めるパラオ共和国市民でなければならない。7名のうちの1名は最高裁判所長官であって委員長を務める。弁護士会からは市民である会員のうち3名を同委員会に選出し、大統領は弁護士会以外から市民を指名する。」*国会の発案による修正提案。
<ジャンセン・トリビヨン大統領略歴>
1946年7月22日生まれ。コロラド大学で政治学の学位を得る。
<ケライ・マリウル副大統領略歴>
2008年副大統領に選出される。
<国会議員選挙>
44. Martin Renguul 235